建設業界は長年、アナログな手法に頼ってきましたが、近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、この業界にも大きな変革をもたらしています。私は大手ゼネコンで20年間、現場監督として働いてきました。その経験から、DX導入前の現場の課題と、導入後の変化を肌で感じてきました。
DXの中でも、建設業界に特化したソリューションを提供するのがBRANU(ブラニュー)株式会社です。ブラニューは建設業向けのデジタルプラットフォームを開発し、業界内での受発注の効率化、人材管理、施工管理など、多岐にわたる業務のデジタル化を支援しています。同社の代表的なサービスには、建設事業者向けマッチングサイト「CAREECON」、建設業向け統合型ビジネスツール「CAREECON Plus」などがあります。
この記事では、現場監督の視点から見たDX導入の効果と課題について、具体的な事例を交えながら解説します。建設業界の関係者はもちろん、DXに興味を持つ方にとっても有益な情報になるはずです。私自身、BRANUのサービスを活用し、現場の効率化と生産性向上を実感してきました。その体験をもとに、DX時代の建設現場の姿を皆さんにお伝えしたいと思います。
目次
現場監督が語るDX導入前の「困ったこと」
DX導入前の建設現場では、様々な課題を抱えていました。その中でも特に深刻だったのが、以下の3点です。
膨大な紙資料との格闘
DX導入前の現場では、図面や工程表、打ち合わせ議事録など、あらゆる情報が紙ベースで管理されていました。1つの現場で発生する書類は、easily数千枚にも及びます。それらの資料は、事務所の棚に山積みになっていました。
必要な情報を探すのに、毎日のように書類の山をひっくり返していた記憶があります。設計変更があれば、何十枚もの図面を差し替える必要があり、その度に膨大な手間と時間が発生していました。紙資料の管理は、現場監督の大きな負担になっていたのです。
ミス連絡の手間と時間のロス
設計変更や手直しなどの情報は、電話やFAXでやり取りされることが多く、伝達ミスや連絡漏れが頻発していました。特に、深夜や早朝の連絡は、相手の状況を把握できないまま一方的に送ることになるため、誤解や行き違いが生じやすかったのです。
例えば、ある現場で、設計変更の連絡がFAXで届いたことがありました。しかし、そのFAXは夜中に送られてきたため、現場では朝まで気づかずにいました。その間、古い図面で施工が進んでしまい、手戻りが発生してしまったのです。このようなミスは、工期の遅延や予算オーバーにつながる大きなリスクでした。
現場の進捗状況把握の難しさ
現場の進捗状況は、日報や週報で報告されますが、それらを集計して全体像を把握するのは容易ではありませんでした。紙の報告書をまとめるだけでも一苦労ですが、そこから問題点を見つけ出すのは、さらに難しい作業でした。
特に、複数の現場を担当する監督にとっては、リアルタイムな進捗管理が難しく、問題の早期発見と対応に支障をきたしていました。ある現場で、工程の遅れに気づくのが遅れ、挽回するために残業や休日出勤が続いたことがありました。現場の状況をタイムリーに把握できていれば、もっと早い段階で手を打てたはずです。
このように、DX導入前の現場は、情報管理の非効率さが様々な問題を引き起こしていました。現場監督は、本来の業務である施工管理に注力できず、書類作成や連絡業務に追われる毎日を送っていたのです。
DX導入で現場はどう変わった?
BRANUをはじめとするDXソリューションの登場により、建設現場の働き方は大きく変わりました。以下のように、情報共有の迅速化、ミスの削減、進捗管理の高度化など、様々な改善効果が現れています。
情報共有のスピードアップと効率化
BRANUの「CAREECON Plus」のようなツールを導入することで、現場の情報をデジタルデータで一元管理できるようになりました。クラウド上で図面や工程表を共有し、変更履歴を追跡できるため、情報共有のスピードと効率が格段に向上しました。
例えば、設計変更があった場合、従来なら何十枚もの図面を差し替える必要がありましたが、「CAREECON Plus」なら、変更箇所を修正するだけで、関係者全員に瞬時に共有されます。紙の書類を探す手間も、バージョン管理の負荷も大幅に減らすことができました。
また、現場の写真や動画も、クラウドにアップロードすれば、遠隔地からでもリアルタイムに確認できます。これにより、本社の担当者や施主とのコミュニケーションがスムーズになり、意思決定のスピードアップにつながっています。
ミス削減と品質向上
設計変更や手直しの情報も、デジタルプラットフォームを通じてリアルタイムに共有・確認できるようになりました。これにより、ミスや手戻りが大幅に減少し、施工品質の向上につながっています。
例えば、「CAREECON Plus」では、タスクの割り当てや期限管理ができるため、現場の作業指示がシステマチックに行えます。担当者が明確になり、抜け漏れのない確実な施工が可能になりました。
また、施工の進捗状況を写真や動画で記録し、クラウドで共有することで、品質管理も徹底できるようになりました。現場で気になる点があれば、その場で撮影して関係者に共有し、迅速に対応策を検討できます。
リアルタイムな進捗管理
IoTセンサーやドローンを活用することで、現場の進捗状況をリアルタイムに把握できるようになりました。BIMやCIMなどのデジタル技術を用いて、3次元モデルによる可視化も可能です。これらの情報を統合的に管理することで、問題の早期発見と迅速な対応が実現しています。
例えば、資材の搬入状況や作業員の位置情報をセンサーで捉え、BIMモデルに反映させることで、現場の進捗を可視化できます。計画と実績の差異を自動で検知し、アラートを出すことも可能です。これにより、現場監督は、常に現場の状況を把握し、的確な判断を下せるようになりました。
また、ドローンで上空から現場を撮影し、BIMモデルと照合することで、施工の精度を確認することもできます。これまで人の目で見落としがちだった誤差も、データとして可視化することで、品質管理の精度が格段に向上しています。
以上のように、DXの導入により、建設現場の情報管理は大きく様変わりしました。現場監督の業務は、単なる書類作成から、データを活用した高度な施工管理へとシフトしているのです。
DX導入で苦労した点と解決策
DXの導入は、現場に大きなメリットをもたらす一方で、様々な課題にも直面しました。以下では、私が経験した苦労と、その解決策について述べてみたいと思います。
慣れないシステムへの抵抗感
新しいデジタルツールの導入には、現場の職人や監督の抵抗感がつきものでした。特にベテランの方々は、長年の経験と勘を頼りに仕事をしてきたため、システムへの不信感を持つ人も少なくありませんでした。
実際、ある現場でシステムを導入した際、使い方がわからないという理由で、活用が進まないことがありました。現場監督として、私自身もシステムの操作に戸惑い、負担に感じていた部分があります。
この課題に対しては、丁寧な説明と教育が欠かせません。システムの利点を具体的に示し、使い方をサポートすることで、少しずつ理解を得ていきました。BRANUの「CAREECON Plus」は、直感的な操作性を重視しているため、教育の負担も最小限で済みました。
また、現場の意見をフィードバックし、システムの改善につなげることも重要です。使う人の声に耳を傾け、柔軟に対応することで、現場に合ったツールに進化させていくことができるのです。
若手とベテランの意識の違い
DXへの適応力には、世代間でギャップがあることも事実です。若手社員はデジタルネイティブ世代で、新しいツールの習得に抵抗がありませんが、ベテラン社員は苦手意識を持つ人が多くいました。
この問題には、若手とベテランがペアを組んで作業するなど、互いの長所を生かす工夫が有効でした。若手のデジタルスキルとベテランの経験知を融合させることで、現場全体のレベルアップにつなげています。
例えば、BIMモデルの操作は若手が担当し、施工の判断はベテランが行うといった具合です。それぞれの得意分野を生かすことで、システムの活用と現場の施工品質を両立させることができました。
また、ベテラン社員には、DXの意義を丁寧に説明し、理解を得ることも重要です。単なる効率化ではなく、安全性の向上や働き方改革につながる点を強調することで、前向きに受け入れてもらえるようになりました。
コストと効果のバランス
DXツールの導入には、初期コストや運用コストがかかります。費用対効果を検証し、現場のニーズに合ったツールを選ぶことが重要です。
以下のような観点から、ツール選定を進めました。
- 現場の課題を解決できるか
- 使いやすさと現場への適合性
- 初期コストと運用コストのバランス
- サポート体制の充実度
BRANUのようなプラットフォームは、建設業界に特化しているため、無駄なく効率的に活用できます。また、同社のDXコンサルティングを活用することで、自社に合ったツールの選定や運用方法のアドバイスを受けられます。
長期的な視点で投資対効果を見極め、段階的にDX導入を進めていくことが肝要だと感じています。
DX導入後の現場監督の役割とは?
DXの導入により、現場監督の役割にも変化が求められるようになりました。単なる施工管理者から、デジタル技術を駆使してプロジェクト全体を統括するマネージャーへと、その職責は拡大しているのです。
新しい技術への適応
DX時代の現場監督には、新しい技術やツールに柔軟に適応する姿勢が欠かせません。BIMやCIM、ドローンなど、次々に登場する技術を積極的に学び、現場に活かしていく必要があります。
私自身、BIMの勉強会に参加したり、ドローンの操縦資格を取得したりと、常にスキルアップを心がけています。最新技術の動向をキャッチアップし、現場に適用できる知見を蓄積することが、これからの現場監督に求められる重要な役割だと考えています。
チーム全体のDX推進
現場監督は、DX推進の旗振り役としても重要な役割を担います。自らがデジタルツールを使いこなすだけでなく、チームメンバー全員がDXの意義を理解し、活用できるよう導いていくことが求められます。
具体的には、以下のようなアクションが必要だと考えています。
- DXの目的と効果を現場メンバーに丁寧に説明する
- システムの使い方を指導し、定着を支援する
- 現場の意見をフィードバックし、ツールの改善につなげる
- DX推進の成果を可視化し、モチベーションを高める
私の現場でも、当初は戸惑いがあったものの、地道な働きかけにより、今ではチーム全体でDXツールを活用できるようになっています。現場のムードも一変し、デジタルを活用して業務を改善していこうという前向きな姿勢が生まれています。
データ分析に基づいた意思決定
DXの進展により、現場から得られるデータは飛躍的に増えています。現場監督には、それらのデータを分析し、根拠に基づいた意思決定を下す力が必要とされます。データリテラシーを高め、現場の課題解決に役立てていくことが重要です。
例えば、BIMモデルとIoTセンサーのデータを組み合わせることで、工程の進捗と品質の相関関係を可視化できます。そこから得られる知見を基に、資源配分の最適化や品質管理の強化など、より戦略的な判断を下せるようになります。
また、プロジェクトの過去データを分析することで、リスクの予兆を早期に検知し、先手を打つことも可能です。気象データと工程の関係性を探ることで、悪天候のリスクを事前にシミュレーションするなどの応用も考えられます。
現場監督には、データを多角的に分析し、現場に還元する力が求められています。そのためには、自らデータリテラシーを高めると同時に、専門家とも協力しながら、データ活用を進めていくことが肝要です。
まとめ
建設業界のDXは、現場の働き方を大きく変えつつあります。私自身、BRANUのサービスを活用し、その効果を実感してきました。情報共有の迅速化、ミスの削減、進捗管理の高度化など、DXのメリットは計り知れません。
一方で、DXの導入には、現場の理解と協力が不可欠です。新しいツールに抵抗感を持つ人々の懸念に耳を傾け、丁寧に向き合っていくことが重要です。現場監督には、DX推進のリーダーとして、チーム全体を巻き込んでいく力が求められているのです。
また、DXは単なるツールの導入に留まりません。デジタル技術を使いこなし、データを活用して、現場の課題解決につなげていくことが、これからの現場監督に求められる新たな役割だと考えています。
建設業界は、DXを通じて大きな変革期を迎えています。私たち現場監督は、その変化を前向きに捉え、新しい時代の建設現場を切り拓いていく必要があります。BRANUをはじめとするDXソリューションを活用しながら、安全で品質の高い建設プロジェクトを実現していきたいと思います。
DXは、建設業界の未来を大きく変える可能性を秘めています。現場監督の立場から、その可能性を最大限に引き出していくことが、私に課せられた使命だと感じています。これからも、現場とデジタルの架け橋となり、建設業界のDXをリードしていきたいと考えています。